キッカーのジャンプが怖い、スピードがわからない スノーボーダーが3連を飛んだ日の本音

キッカーのジャンプが怖い、スピードがわからない スノーボーダーが3連を飛んだ日の本音 滑りの話

キッカーの前に立つと、急に足がすくむ。

アプローチでは「これくらいかな」と思って入ったのに、飛んだ瞬間に「あ、やばい」と思う。練習してきたはずの技が、なぜか今日は1回も気持ちよく決まらない。

そういう日、ありませんか。

上手い人は怖さなんて感じずに飛んでいるように見えます。でも、実際はそうでもないようです。

今回は、スノーボーダーたちがキッカーを飛んだ一日の会話を追いかけながら、ジャンプの怖さ、スピード感、「立ちに行く」という感覚について、動画の中で出てきた言葉をそのまま拾っていきます。

きれいな答えが出る話ではありません。ただ、同じところで悩んでいる人にとっては「自分だけじゃないんだ」と思える場面が多いと思います。

キッカーのジャンプは、上手い人でも緊張している

この日、先に飛ぶ側の一人は、その日の4本目(本人も「3本目か4本目か」と言っています)で、初めて超える3連に入ろうとしていました。

予定は、B3、フロント3。スピードによってはもう何かできる、という組み立てです。

横で見ていた仲間は「攻めるね。すごいよ、本当に」と言っていました。オフトレをしていなくて、このキッカーで4本目で、B3、フロント3、最後にスピードがあれば何かやろうとしている。「俺からしたらマジすごい」と。

ところが、飛ぶ本人の言葉はこうでした。

「みんな多分緊張してないって思ってるかもしんないけど、結構緊張してます」

周りからは余裕に見えても、本人は緊張している。キッカーに入る前の気持ちは、上手い人でもそこまで変わらないのかもしれません。

「怖くなくなったら多分やめちゃう」

この人は、自分がなぜ飛ぶのかについても話していました。

「俺はもう本当にその生きるか死ぬかでやってるから」 「怖くなくなったら多分やめちゃう」 「危ねえって言いたいだけ。多分うまくなりたいとかじゃないんだよ」

怖さをなくすために練習しているのではなく、怖さそのものがあるから続けている。そういう向き合い方もある、ということです。

怖いと感じる自分はダメなんじゃないか、と思っている人は多いと思います。でも、実際に飛んでいる人の口から「怖くなくなったらやめちゃう」という言葉が出てくる。怖さはジャンプから切り離せないもので、あって当たり前のものなんだと思います。

「飛びすぎた」 キッカーのスピード感がわからない

1本飛んだあと、会話はスピードの話になります。

「2本目は飛びすぎたよね」

後ろから同じスピードで行こうとしたけれど、飛んだ瞬間に「あ、これやば」と思った。さらに、調子に乗ってノーズを取ろうとか考えていたら、スピードがわからなくなった。

仲間からは「攻めすぎだよ、4本目で」と言われていました。本人は「全然痛くない」と返していましたが。

アプローチでは早いと思わなかった

面白いのが、飛んだ本人の感覚です。

「アプローチの時はそんな早いと思わん。リップ手前で、いいやこれ行けると思った」 「ボトムぐらいまではまあまあいけるかぐらいだと思った」

アプローチの時点では「行ける」と思っていたのに、結果は飛びすぎ。本人も「ちょっともうスピード感が最近わかんないんで」と話していました。

スピードが合っているかどうかは、入っている最中にはわかりにくい。飛んでみて初めて「早すぎた」と気づく。キッカーでよくある、でもなかなか人に説明しにくいズレです。

次は「ちょっと押さえる」

そこで出てきた答えはシンプルでした。

「オッケー。じゃ、ちょっと押さえます」

2個目で調子に乗らないように気をつける、とも言っていました。

飛びすぎたら、次は少し押さえる。完璧なスピードを最初から当てにいくのではなく、1本ごとに調整していく。そういう進め方をしているのがわかります。

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オフトレの成果がキッカーのジャンプに結びつかない

もう一人のライダーは、この日ずっとフロント3を気にしていました。

「フロントが合わんのが気がかり」

これに対して、仲間はこう返します。

「合う合わないじゃないんだよ。お前が合わせんだよ」

本人は「いや、下手なんだよな。マジで」と笑っていましたが、この言葉はけっこう刺さる人がいると思います。キッカーのほうが合わないのではなく、自分がキッカーに合わせにいく。考え方の向きが逆なんですね。

夏のオフトレと雪山のキッカーの間にあるもの

このライダーは、夏の間にオフトレをしてきていたようです。

ただ本人の感覚としては、「意味はあると思うけど、なんか結びついてないまだ」。

それに対して、仲間からはこんな話が出ていました。

オフトレの施設は、いつでも同じ形、同じ速度でやれる。その条件をどう雪山につなげるか、そのためにみんなやっている。

そして、そもそもの成り立ちとして、パウダーなどですでに9とか10をやっている人たちが限界を超えるために始まった施設なんじゃないか。だから、スーパーキッズ以外はなかなか難しいんじゃないか、と。

これは会話の中での一つの見方で、正解として言い切られているわけではありません。ただ、「オフトレしたのに雪上で変わらない」と感じている人にとっては、自分を責める前に一度考えてみていい視点だと思います。

ジャンプ2〜3年目なら、まだしょうがない

このライダーについては、こんな背景も話されていました。

大人から始めて、19歳ぐらいでグラトリから入った。ジャンプはまだ2年目、3年目ぐらい。

それに対する仲間の言葉は「まだしょうがないんじゃないですか」でした。

グラトリから入ってジャンプに移ってきた人が、数年でフロント3に悩む。それは下手だからではなく、まだその途中にいるということなのかもしれません。

「今日1回も気持ちいいのないから」

フロント3について、本人は「怖くはないんだけど、モヤモヤが晴れない」と言っていました。

理由はわかりやすくて、「今日1回も気持ちいいのないから」。

そこで出た結論は、午前中はフロント3を置いておいて、ちゃんとBを練習してきた通りにやる、というものでした。

うまくいかない技にこだわり続けるのではなく、一度置いておく。練習してきた通りにできるほうを確実にやる。モヤモヤしている日の過ごし方として、参考になる判断だと思います。

この記事の内容は、上の動画で話したことをまとめたものです。声のトーンや実例も含めて聞きたい方はこちらから。

「立ちに行く」がわからない、抜けで諦めてしまう

この日の会話で、いちばん意見が分かれていたのがここです。

仲間から「立ちに行って、ちゃんと」と言われたライダーは、こう返しています。

「それわかんない。立ちに行くとか、気持ちの問題」 「気持ちで立つとか、マジでわかんない」

言われた側からすると、たしかにそうなんですよね。「立ちに行け」と言われても、具体的に何を変えればいいのかがわからない。

抜けで「ああ、こけます」となるのが怖い

それに対して、仲間が話していたのはこういうことでした。

抜けでも、ミスったら諦めるじゃん。「もうああ、こけます」みたいな感じで、ダメだなと思っている。見ていてそれが怖い。

見ている側からすると、抜けの時点で諦めてしまう姿のほうが怖く見える、ということです。

ところが本人の答えは逆でした。

「俺、立ちに行くと怪我するもん」

見ている側は「諦めるほうが危ない」と感じていて、飛んでいる本人は「立ちに行くほうが怪我をする」と感じている。どちらが正しいという話ではなく、同じ場面でも立場によって見え方がまったく違うということがよくわかるやりとりです。

結局、このときは「じゃあ、いつも通りや」で落ち着いていました。

楽しむもの、という前提

会話の途中では、こんな言葉も出ていました。

「好きにやってください」 「楽しむもんだから、そもそもが」

一方で、「練習じゃないから本番だから」「カメラ回ってんですから」と、半分冗談で緊張感をつくる場面もありました。

楽しむことと、本番のつもりでやること。その両方が同じ一日の中にあるのが、仲間と飛ぶキッカーのリアルなところだと思います。

勢いに乗るジャンプは大事、でもそれだけではダメ

後半、1本飛んだあとに2発目でセブンを狙うという場面がありました。普段はあまりやらない組み立てです。

本人は「多分勢いに乗ってるだけで、自分騙してるだけだと思いますけどね」と笑っていました。

それに対する仲間の言葉がこれです。

「俺はそういうのも大事な気がする。それだけではダメだと思う」

勢いに乗ること自体は悪くない。でも、勢いだけに頼るのも違う。短い言葉ですが、キッカーに向き合うときのバランスがよく表れていると思います。

転ぶ前提で決めて、悩んでいても行く

最後の1本の前には、こんなやりとりがありました。

向かい風と雪がいい。左に飛んで、転んだ時は左に避けてくれればいい。

「なんかもう転ぶ前提の話してるけど」 「いや、マジでやだ。マジ怖い」

それでも「悩んでてもしょうがないからね」と言って入っていきます。本人いわく、「正直コンディションは良くないです」。

怖いまま、転んだときの動きまで決めて、それでも行く。怖さがなくなってから飛ぶのではなく、怖さを抱えたまま準備を整えて飛ぶ、という順番です。

飛びに集中しすぎて、1個目を覚えていない

飛び終わったあと、本人はこう言っていました。

「今、正直飛びに集中しすぎて、1個目がどんな感じだったかわかんないです」

もう一人は、2個目の追い飛びを諦めてナックルから行ったそうです。それでも仲間からは「ちゃんと組み立てたのがすごい」「俺あのサイズでB5立てたことない」という声が出ていました。

全部がうまくいった一日ではありません。飛びすぎもあったし、フロント3のモヤモヤも晴れていない。それでも、怖い、わからない、と言いながら1本ずつ組み立てていく様子は、キッカーに悩んでいる人にとって一番リアルな参考になると思います。

まとめ

  • キッカーのジャンプは、上手く見える人でも「結構緊張してます」と言っている。怖さはあって当たり前のもの
  • 「怖くなくなったら多分やめちゃう」という向き合い方もある
  • アプローチでは早いと思わなくても、飛んでから「飛びすぎた」と気づくことがある。そのときは次の1本で「ちょっと押さえる」
  • 「合う合わないじゃなく、自分が合わせる」という考え方
  • オフトレの成果が雪山のキッカーにまだ結びつかないのは、珍しいことではないのかもしれない
  • ジャンプ2〜3年目なら「まだしょうがない」。うまくいかない技は一度置いておき、練習してきた通りにやれるほうを確実にやる
  • 「立ちに行く」は、見ている側と飛んでいる側で感じ方が違う。抜けで諦めるのが怖いと感じる人もいれば、立ちに行くと怪我をすると感じる人もいる
  • 勢いに乗るのは大事。でもそれだけではダメ
  • 怖いまま、転んだときの動きまで決めて、悩んでいても行く

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