ブーツを替えたら別人になった話|スノボの道具は滑りをどこまで変えるのか

ブーツを替えたら別人になった話|スノボの道具は滑りをどこまで変えるのか ギアの話

道具を替えても、どうせ大して変わらない。

そう思っている人、けっこう多いと思います。僕もどちらかというとそっち側でした。上手い人は何を履いても上手いし、下手な人は高い道具を買っても下手なままでしょ、と。

でも先日、ブーツを買い替えた知り合いに一日密着して滑ってきて、その考えが少し揺らぎました。

買い替えたのは、それまで「長靴でスノーボードやってた」と本人が言うような状態からの一新です。新しいのはバートンの8万円のもの。朝、会って開口一番がこれでした。

「やっと右足が使えるって気づいた」

自分の足が使えていなかったことに、履き替えて初めて気づいた、と。

新しいブーツは、最初は「良くならない」

まず正直なところから書きます。

替えてすぐの本人の言葉は「新しい感覚にまだ慣れてない」でした。良くなった、ではなく、慣れてない。ここが道具の話で一番よく飛ばされるところだと思います。

具体的にどう慣れないのか聞いたら、こう返ってきました。

「めっちゃ指動く。指どう使えばいいのみたいな」

そのブーツにはバランス工房も入っていて、指を下げて、上げて、という使い方を求められる。今まで通りの足の使い方だと合わなくて、足が痛くなる人も多い。僕もありました。

だから、履いた初日に劇的に何かが良くなる、という話ではないんです。むしろ最初は違和感と疲れが来ます。

慣れるまでの実感は「3〜4回」

じゃあどれくらいで馴染むのか。僕の場合は、3〜4回くらい滑ったら結構良くなった感覚がありました。

これは人にもよるはずなので、絶対にこうとは言えません。ただ、1回履いて「合わないな」で終わらせてしまうのは早いかもしれない、というくらいのことは言えると思います。

初日は無理をしない。それがこの日の共通認識でした(結果的に、その約束は守られないのですが)。

疲れるのは、体が起きていないから

その日の最後、彼はこう言っていました。

「めっちゃ疲れた。今までだったらそこまで疲れてなかったけど」

これ、道具が悪いわけじゃないと僕は思っています。

今までのブーツでは使わずに済んでいた部分を、新しいブーツが使わせにきている。体のほうは「今まで通りのクソな足でいようよ」「そんな力出したくないよ」とだらけている状態です。

拷問とまでは言わないにしても、体を叩き直しているところなんです。眠っていた部分を目覚めさせている段階。だから初日は辛い。

そして慣れてくると、今度は体のほうがやる気を出してくる。ブーツに合わせて体が変わっていく。そういう順番なんだと思います。

道具より先に変わったのは「メンタル」だった

ここからが、この日いちばん驚いた部分です。

向かったのは高井富士。長野県で、その日いちばんコンディションが良さそうという理由での選択でした(本当は翌日に賞金50万円の大会がパルコールであって、下見に行く選択肢もあったけれど、マイナス11度と出ていて、前日に行ってやる気をなくすくらいなら当日行ってやる気をなくして帰ってきたほうがいい、という判断です)。

高井富士のパークは、正直かなり良かったです。アイテム数も多くて、上級ラインには10mが3連。この規模の3連は今ほとんどないと思います。

ただ、実際に上から見ると印象が変わりました。

「10mでしょ」「10mないでしょ、もう12あるでしょ」

テーブルが12くらいあるんじゃないか、という話になる。奥にあるバックサイドヒップに至っては、ヒップ前後したら20mあるかもしれない。僕らが普段ヒップと言っているのは、あれと比べたらおもちゃみたいなものです。

石打よりのり面がえぐい。石打のほうがまだ緩かった。そう感じるくらいでした。

しかも、誰も飛んでいない。こんなにいいパークがあるのに、です。

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この記事の内容は、上の動画で話したことをまとめたものです。声のトーンや実例も含めて聞きたい方はこちらから。

「今まで通りだったら、今日はやめとこうって言ってた」

まず僕が3つとも入ってチェックしました。めちゃくちゃ突っ込んでも落差が全然出ない。リップは結構細めではあるけれど、すごく安全でした。高井富士、パーク結構いいな、と。

そこで彼が言い出したのが「次、飛ぶわ」でした。

チェックしたばっかりですよね、と。まだ1個目しか見てないですよね、と。しかもその日、まだ2本目です。

今までなら、彼はこういうタイプではありませんでした。夜にめちゃくちゃイメトレして行って、それでやられるのがオチ。前の人がやられたのを見たら「ちょっと今日やめとこうかな」と言うし、逆に「今日は調子いいから行くわ」という日にやられたりする。そういう人でした。

その日は、目の前で壮絶に上手そうなキッズがやられていました。それでも「大丈夫。前の人とか関係ない。行ける」でした。

そして本当に、全部行きました。3本目にはグラブまで狙って、最後はストレートで通していました。

イメトレも、もういらないと。

変えたのはブーツだけ

何か変えたところあるんですか、と聞いたら、返ってきたのは「やっぱブーツでしょ」でした。完全にブーツ信者です。

ここは正直に書いておきたいのですが、ブーツが直接メンタルを変えたのかどうかは、僕には分かりません。

ただ、この日に彼が変えたのはブーツだけです。そして、右足が使えるという感覚が入った瞬間に、彼は自分の滑りに対する予測が変わったように見えました。前の人がやられても関係ない、というのは、他人を見て判断していた状態から、自分の感覚で判断できる状態に移ったということだと思います。

道具が体を変えて、体が判断を変える。順番としては、そういうことなのかもしれません。

感覚がズレている自覚は持っておいたほうがいい

一方で、この日はもうひとつ気になったことがありました。

朝、スキー場を当てるクイズをやっていたときのことです。かなり分かりやすいヒントを出したつもりだったのに、彼はまったく当たりませんでした。動きだけで普通の人なら分かるレベルのヒントだったと思うのですが、届かない。

僕のほうから「今ブーツ変えてバグってるから、それで分からなかっただけかも」と言いました。

これ、笑い話にしていましたが、少し危ないなとも思いました。トウサイドターンをしているつもりで、ヒールサイドターンをしている可能性がある。アクセルとブレーキを踏み間違えるようなものです。

だから、道具を替えた直後は「自分の頭の切り替えができていない」という前提を持っておいたほうがいい。感覚が新しくなっているのに、脳のほうが古いままだと、思っているのと違う操作が出ます。

初日は無理せず、というのは、そういう意味でも理にかなっていたはずです(この日は結局、無理をしていましたが)。

過去に迷惑をかけた場所に、戻ってくることもある

余談ですが、僕はバスツアー時代にこの高井富士に来たことがありました。ノーリー1しかできない頃です。上級者に混じって、わけも分からずハーフパイプに適当に入ったりしていました。

相当迷惑をかけていたと思います。思い出の地です。

そういう場所に、何年か経って別の立場で戻ってくる。景色を見ながら、横もちゃんと整備されているな、絶景だな、と思っていました。パークの良し悪しだけじゃない部分も、たまには書いておきたくなります。

まとめ

  • ブーツを替えた初日は「良くなる」より先に「慣れない」が来る。指の使い方が変わって、足が痛くなる人もいる
  • 僕の実感では3〜4回滑ったあたりで結構良くなった。1回で見切りをつけるのは早いかもしれない
  • 初日に強く疲れるのは、今まで使っていなかった部分を使わされているから。体が起きていない段階の疲れ
  • 道具を替えた直後は感覚と頭にズレが出る。つもりと違う操作が出る前提で、初日は無理をしない
  • 今回いちばん大きく変わったのは滑りの技術というより、飛ぶかどうかの判断のしかただった
  • 前の人がやられても関係なく行けるようになったのは、他人ではなく自分の感覚で判断できるようになったからだと思う
  • 変えたのはブーツだけ。それだけで別人に見えることが、実際にある

自分の場合はどうなのか

ここまで書いてきたことは、あくまで一般的な話です。

実際は、体つきも、道具も、滑ってきた時間も人によって違います。自分の場合はどうなのか、どこから手をつければいいのか。個別に見てほしいという方は、レッスンをやっています。下のどちらからでも受け付けています。

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