スノボのパークでレールが怖い時|神楽スキー場の独学ローカルに聞いた練習の考え方

スノボのパークでレールが怖い時|神楽スキー場の独学ローカルに聞いた練習の考え方 滑りの話

パークのレールを前にして、入れないまま時間だけが過ぎていく。

そういう日、ありませんか。

やり方は分かっているつもりなんです。頭の中では何度も入っている。でも実際に板を向けると、どこかで中途半端になる。かすっただけで終わったり、思っていた形にならなかったり。

そのうち、自分にはまだ早いのかな、と思い始める。

先日、神楽スキー場に行ったときに、パークのレールにひたすら向かい続けている人がいました。声をかけて話を聞いたんですが、その人の言っていたことが、僕にはかなり刺さりました。

上手い人だから怖くない、という話ではまったくなかったんです。

その日のゲレンデはコンディションも良くなくて、キッカーもなかった

まず状況から書きます。

僕がその日行ったのはシーズンインのタイミングで、目的はフリーランでした。パークはあったんですが、キッカーがない。ゲレンデのコンディションも良くなくて、いかつい感じでした。

自分が無理に何かやるのは危ないな、というコンディションです。

なので、その日はやっている人に話を聞くことにしました。パークのアイテムに向かっている人がいたので、撮影の許可をもらって、少しだけ話をさせてもらった、という流れです。

その人は、ハイクアップのためだけにその日来ていました。他の目的はなくて、それ一本です。

「難しい方」に行く人が、実は一般のお客さんだった

見ていると、その人はアイテムの中でも難しい方に行きました。

2段落ちで折れている棒に乗るやつです。ダブルダウンレールらしい、と教えてもらいました。

一般の方だと思って声をかけたんですが、滑りを見ていると一般人とはちょっと思えないくらい上手そうに見える。有名なライダーの方なんじゃないか、という気がしてきます。

でも聞いてみると、そうではありませんでした。

有名な方ではなく、普通のお客さんとして来ている。スノーボード歴だけは結構長い。そして独学だそうです。

選手でもないし、大会に出るわけでもない。本人の言葉だと「遊びに来てる」。

ここ、けっこう大事なところだと思っていて。ああいうアイテムに向かえる人は特別な立場の人だと、僕らはつい思ってしまいます。でも実際には、遊びに来ている人が独学であそこまでやっている、というケースがある。

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「今は恐怖心との戦い」──基本が分かっていても中途半端になる

話を聞いていて一番びっくりしたのが、この部分です。

その人自身が、今は恐怖心との戦いだと言っていました。

基本は分かっちゃいるんだけど、やっぱり中途半端になっちゃうんですよね、と。

これ、僕らがパークのレールの前で立ち止まっているときの感覚と、言葉としてはほとんど同じですよね。分かっているのにできない。分かっているからこそ、中途半端になる。

しかも、この日その人は「あと30分くらいやる」と言っていました。今の感じは永遠に繰り返す可能性も全然ある、とも。

1本で決まる前提で入っていないんです。

僕はここでちょっと考え方が変わりました。1本入って失敗して、うわ無理だ、と思って離れることが多かったんですが、そもそも繰り返す前提で来ている人がいる。同じ場所に30分立ち続ける前提で入っている。

決まらないことを失敗として数えていないんだと思います。

「グーパンチで来たらグーパンチで返す」という向き合い方

じゃあ怖いときはどうするんですか、と聞いてみました。

返ってきたのが、この例えでした。

自分は昭和生まれなので、鉄との殴り合いみたいな感じでやる。向こうがグーパンチで来たら、こっちもグーパンチで返す。やるかやられるか。

レールを相手に見立てているわけです。

しかもその日の状況としては、さっきから殴りには行っているんだけど、殴り返されている。ちょっと届かないな、という感じですね、と本人が言っていました。

僕が面白いと思ったのは、負けている自覚があるまま次に行くところです。

届いていないことは分かっている。それでも次に行く。怖いという感情も認めていて、隠していない。それでもう1本入る。

「まだまだ来い」と言われて胸を貸してもらっている状態で、自分は借りている方だ、という言い方もしていました。

対等じゃない相手に、対等じゃないと分かった上で向かっていく、という感じでしょうか。

この記事の内容は、上の動画で話したことをまとめたものです。声のトーンや実例も含めて聞きたい方はこちらから。

ボックスに逃げない理由は「美学に反すんねん」

途中、僕はけっこう失礼なことを聞いています。

見ている限り、言っている割に行けていないんじゃないか、と。ダブルの側でやられるならまだしも、手前のシングルで、ファーストでやられている。今のはそもそも、かすってたみたいな感じですよね、と。

その人は、兄さんの言う通りですね、と認めていました。自分でもビビり気味だと分かっている、と。

それなら怖くない方から行けばいいのでは、という意味で、ボックスとか行ったらいいんじゃないですか、と聞いてみたんです。

返事は、それちゃうねん、でした。

美学に反する、と。弱いやつを倒してもおもろないやろ、と。

これ、僕は正直、その場では反論しました。強者に挑んでればいいってわけでもないと思いますけどね、と。結局は結果なんじゃないですか、という話です。

その人の答えは、結果なんだ、結局は、というものでした。

難しい方に向かい続けるのは、遊びとしてやっている

この人の位置づけがずっと不思議で、僕は何度も確認しています。

選手じゃないですよね。ライダーじゃないですよね。大会に出るわけでもないですよね。

全部「全然」でした。単純に遊びに来ている。

その上で本人が言ったのが、崇高な遊びです、という言葉でした。

なかなか今の時代、本気で殴り合う相手が見つからないじゃないですか、と。昭和の育ちだと、殴り合って初めて分かり合うみたいなところがある、と。

だから弱いアイテムを選ばない。倒せる相手を探しに来ているわけじゃないからです。

僕はこの考え方に完全に賛成しているわけではありません。さっき書いたとおり、その場でも反論しています。ただ、難しい方に向かい続ける人の頭の中には、こういう理屈があるんだな、というのは分かりました。

上手いから難しい方に行っているんじゃなくて、難しい方に行きたいから行っている。順番が逆なんです。

自己採点はゼロ点、僕から見れば80点

もうひとつ印象に残っている話があります。

滑り終わった直後に、今のは自分の中ではまだ全然、と本人が言うので、点数的にはどうですか、と聞きました。

ゼロだ、と。

理由は、そもそも土台に乗っていないから。形にもなっていない、というのが本人の評価でした。最後に戻したい方向が逆だった、思い描いていた形ではなかった、とも言っています。

でも僕が横で見ていた印象は全然違って、自分だったら80点はあげたい出来でした。

そう伝えたら、いやちょっと甘いかな、と返ってきました。

ここ、パークで練習している人にはけっこう身に覚えのあるところじゃないでしょうか。

外から見ている人と、本人の中の基準が、まったく違う。乗れて降りてこられたら成功に見えるのに、本人の中では土台に乗っていない時点でゼロ。

そしてゼロだと思っているからこそ、あと30分やる、という話になる。

外から見た評価で満足しない代わりに、自分を責めて終わりにもしていない。ただ次の1本に行く。この距離感が、僕にはちょっと真似できないなと思いました。

「さっきより良かった」が、いちばん現実的な進み方

その後、続けて何本か入っていました。

僕が見ていた範囲でも、明らかに良くなった1本がありました。さっきより良かったですよね、という話をしています。逆に、さっきより殴れてなかった、という本数もありました。

つまり、右肩上がりで良くなっていくわけではないんです。

良くなったり、戻ったり、届かなかったり。その中に一本だけ、おっと思うのが混ざる。

最後はアイテムの近くで撮らせてもらって、フロントノーズを見せてもらいました。良かったんじゃないですか、と僕が言うと、返ってきたのは、悔しいけど、でした。

良かった、で終わらない。そこがずっと一貫していました。

まとめ

  • 神楽スキー場のパークで、ダブルダウンレールに向かい続けている人に話を聞いた。有名なライダーではなく、独学の一般のお客さんだった
  • その人でも「今は恐怖心との戦い」で、基本は分かっているのに中途半端になる、と言っていた
  • 1本で決める前提ではなく、あと30分やる、この感じを永遠に繰り返す可能性もある、という前提で入っている
  • 怖いときの向き合い方は「グーパンチで来たらグーパンチで返す」。届いていない自覚を持ったまま、次の1本に行く
  • ボックスなど入りやすい方を選ばない理由は「弱いやつを倒してもおもろない」から。ただし僕は、強者に挑んでいればいいわけでもないと思うと、その場で伝えた
  • 本人の自己採点は「土台に乗っていない」でゼロ点。横で見ていた僕の感覚では80点だった
  • 良くなる本数と、さっきより届かない本数が混ざる。その繰り返しの中に、おっと思う1本が出てくる
  • 最後のフロントノーズを見ても、本人の第一声は「悔しい」だった

自分の場合はどうなのか

ここまで書いてきたことは、あくまで一般的な話です。

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