ヒールターンでもっと深く曲がりたい。そう思って踏み込むと、なぜか崩れる。
狙っていない形になって、手をつくか、そのまま転ぶ。何回滑っても同じところで同じことが起きる。こうでもない、ああでもないと考えながら滑る日が続く。
そういう悩み、ありませんか。
今回紹介する動画は、まさにこの悩みを持った方がレッスンを受ける内容です。ヒールターンで何週間も悩んでいた方の滑りが、その場で変わっていきます。
見ていて僕が一番大事だと思ったのは、滑り方のコツそのものではありませんでした。「自分では楽だと思っている姿勢が、実は合っていない」ということです。これはたぶん、多くの一般スノーボーダーに当てはまる話です。
ヒールターンで深く曲がろうとすると崩れる悩み
動画に出てくる受講者の方は、久しぶりに滑りを撮ってもらいながら、本気で1本滑ります。講師からすると、生き生きと滑っていて特に言うことがないくらいの滑りです。
それでも本人には悩みがありました。ヒールです。
深く回りたいと思うと、崩れてしまう。本人の言葉では、手をつくターン(動画内では「ビッテリー」と呼んでいます)を狙っているわけではなく、ただ深く回りたいだけ。それなのに結果として、その形に近くなってしまう。
この悩みにどれくらいかかっていたかというと、1か月半ほどだそうです。考えながら滑って、それでも抜け出せなかった期間です。
狙っていない形に勝手になってしまう。これは本人の意思とは別のところで何かが起きている、というサインでもあります。
講師の答えは「セッティングを変えれば一撃で治る」
講師は最初に、こう話していました。セッティングを変えたら一撃で治ってしまう、と。
ただ、いきなりそれをやると面白くないので、まずはセッティングを変えずに体の動きから見ていきます。そして最後にセッティングを合わせて、どれくらい変わるかを確かめる。レッスンはこの順番で進みます。
ヒールターンの姿勢は「きつい方」ではなく「楽な方」
最初にやったのは、受講者の方にターンのときの体勢をその場でやってもらうことでした。
ターンをする感じで、足もグッと使った体勢を取ってもらいます。講師はそこで聞きます。その体勢、今どう? きつい?
返ってきた答えは「ちょっときつい」。めちゃくちゃきついわけではない、とのこと。
それに対する講師の答えがこれです。
それをやめてください。楽でしょ、それ。それで行ってください。
以上、解決。本当にそれだけで終わります。
受講者の方も「やっぱりそうなのか」と、そうではないかと思っていた部分があったようです。
感覚と体がずれていると、分からないことをしてしまう
講師の説明では、この受講者の方は自分が楽をできる方法を潜在的によく分かっている人です。感覚やセンスもある。
ただ、そのセンスと体がかけ離れているので、よく分からない動きをしてしまう。この2つを合わせてあげれば、もっと楽に滑れる、という見立てでした。
もう一度、さっきのきつい体勢をやってもらうと、本人も「ちょっとしんどい。なんでやるの?」と言います。自分では「これがいいのかな」と思ってやっていた、と。
ここは読んでいる方にも覚えがあるかもしれません。「このくらい頑張る姿勢が正しいはず」と思い込んで、しんどさを我慢している。それが実は、自分の体には合っていないこともある、ということです。
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ヒールターンで転ぶ原因は踏み込むタイミング
楽な姿勢で滑ってみると、変化が出ます。
講師が「変わってんの分かる?」と聞くと、本人も「変わってる」と答えます。サイドも変わった、と。
そしてもう1つ。さっきの1本より、転ぶのがターンの後半になった。耐える場所、耐えるタイミングが変わったということです。
急に曲がりたいときの踏み込みを、ターンの最初にする
ここからがこの動画の核心だと思います。
講師の指摘はこうです。急に曲がりたいときに踏み込むと、転んでいる。その踏み込みを、ターンの一番最初にするだけ。
そしてターンの後半では何もしない。自分の中で「こうやって曲がるんだ」と思っている動きを、ターンの後半にやらない。
これで次の1本を滑ると、サイドの変わり方がすごいことになって、レッスンは終了します。
深く曲がりたいと思うほど、ターンの後半で何とかしようとしてしまう。でも、やるなら最初にやっておく。後半は何もしない。言葉にするとシンプルですが、1か月半悩んでいたことがこれで片付いてしまいます。
自分なりに滑り込まない
講師は、正直やる前から答えは分かっていたそうです。それでも実際にその通りになって、笑ってしまったと。
そこで出てきた言葉が、「自分なりに滑り込んじゃダメ」でした。自分なりに滑り込んだら、どんどん崩れていく、と。
悩んだときほど、自分で考えて本数を重ねたくなります。僕もその気持ちはよく分かります。ただ、方向がずれたまま滑り込むと、そのずれごと体に染み込んでしまう。動画はその怖さを分かりやすく見せてくれていました。
調子に乗ってくるのをどれだけ我慢できるか
もう1つ、講師が「これは自分も同じ」と話していたことがあります。
再開して1本目でヒールがうまくいくと、どんどん調子に乗ってくる。もっと行ってやる、もっと行ってやる、となっていく。それをどれだけ我慢できるか。
我慢はしつつ、出す力を斜度とスピードに合わせる。講師の言い方では、ここは有料級の話だそうです。
うまくいった直後ほど力を出しすぎる。これは技術の話というより、滑っているときの気持ちの話でもあります。
この記事の内容は、上の動画で話したことをまとめたものです。声のトーンや実例も含めて聞きたい方はこちらから。
ビンディングのセッティングを変えると板が立つ
後半は、いよいよセッティングの話です。
講師から見ると、この受講者の方は今かなりしんどいセッティングで滑っている。本人は楽だと感じているけれど、外からは絶対しんどいだろうなと見えている。この「自己評価と見た目が全く合っていない」のが、この方の特徴だと講師は言います。
バートンのビンディングからセンタリングだけ合わせて付け替え
本当はセッティングを変えようとしたものの、バートンのビンディングの特性上、センターがあまり出せない。そこでアングルは同じままにして、センタリングだけ合わせ、講師のビンディングを付けました。
一方で講師は、受講者の方のバートンのビンディングを借りて滑ります。センタリングは出ていないけれど、付け心地が最高だったそうです。やっぱりバートンいいわ、と。
付け替えた受講者の方はどうだったか。
しんどい、とのこと。片足のときにやっぱりちょっと感じる、と話していました。講師によると、今感じているその感覚が嫌だから、みんな使わない。受講者の方も、今までのビンディング遍歴を考えるとあまり好きではない、と。ただ、昔に比べたら今はそこまでではない、とも話していました。
色々捨てて、板を立てる。シンプルですが、かなりしんどい。全然吸収してくれない、という感想も出ていました。
板との距離が変わると、同じつもりで滑っても板が立たない
ここで講師は、最初にやった「どういう体勢でターンしているか」をもう一度やってもらいます。
すると、本人は気づいていないけれど、お尻から足まで、つまり自分と板との距離が遠くなっている。
さっきまでは、自然に座ったときにその位置にいられた。それはバートンの良さのおかげで、何も考えずにその位置にいられたから。でも今は、その位置にいられない。本人も、遠い方が楽だと言います。
講師の説明はこうです。そういうポジショニングなのに、いつもと同じ距離にいるつもりでターンをしているから、板が立たない。
道具が変わると、自分と板の位置関係が変わる。なのに体はいつもの距離のつもりで動く。そのずれが、板が立たない原因になっていたということです。
スタンサーの話と「自分でいいと感じたら疑う」
座ってみてもらうと、違いがはっきり出ます。
さっきまでは座ってと言われたらお尻がついていた。今はつかない。本人は今の方が「ちょっと痛いな」と感じるようになった、と言います。
講師によると、さっきまでの状態は、前傾の手前までも行けないくらい狭かった。それでは使えない。でも痛くないから、使えているとも思えてしまう。
そして今、やっと自分の体が硬いことを体感できるようになる。講師はこれを「そのためのスタンサー」と話していました。
受講者の方の言葉がこれです。いいなと思っていても、やっぱり使えていなかったんだ、と。
講師の返しは、自分でいいと感じたら疑った方がいい、というものでした。なぜなら僕らは、一般人レベルの「いい」でしかないから。
これは道具選びでもセッティングでも、そのまま当てはまる話だと思います。痛くない、しんどくない、しっくりくる。その感覚が、必ずしも体を使えている証拠ではない。
手をつくターンに逃げなくてよくなった
セッティングを変えて滑ると、立ち姿から違っていました。
講師が「手をつくターンに逃げなくてよくなってるでしょ」と聞くと、本人は、勝手に耐えられなくなることはあるけれど、逃げようと思うことはない、と答えます。
講師の説明では、実は手をつくターンは楽なんだそうです。雑でも行けるし、簡単に立てちゃう。本人の言葉では「休憩みたいな気持ち」。
だから「全然できてないじゃん」と見えるかもしれない今の滑りの方が、本来はつらい。横に切ってヒールで粘る。いつもなら手をつくターンにするか、もう少し早めにトウ側へ行っていたところを、耐えている。
この日は雪が荒れていて、ボコボコのバーンだったそうです。その中でのしんどさでもあります。
まとめ
- ヒールターンで深く回りたいのに、狙っていない手をつくターンの形になってしまう悩みがテーマ
- 最初に直したのは姿勢。きつい体勢をやめて、楽な体勢で滑る
- 急に曲がりたいときの踏み込みは、ターンの一番最初にする。ターンの後半では何もしない
- 自分なりに滑り込まない。うまくいった後に調子に乗るのを我慢して、出す力を斜度とスピードに合わせる
- ビンディングのセッティングを変えると、自分と板との距離が変わる。いつもと同じ距離のつもりで滑ると板が立たない
- 痛くない、楽だと感じる状態が、体を使えているとは限らない。自分でいいと感じたら疑ってみる
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