スノボのキッカーが怖くて飛べない日の練習の進め方

スノボのキッカーが怖くて飛べない日の練習の進め方 滑りの話

リフトの上からキッカーを見た瞬間、今日は無理だな、と思ったことはありませんか。

家を出るときはやる気があった。前の晩は、明日はあれをやろう、これも試そうと考えていた。それなのに、いざゲレンデに着いてリフトから見下ろした瞬間に、朝からビッグを飛んでやろうという雰囲気が全部どこかへ行ってしまう。

僕もこれ、よく分かります。

先日見た動画が、まさにその状態から始まっていました。今年は体も痛くない状態で2月末まで来られていて、これは結構いけるんじゃないかと思っていた。それなのに、リフトから見た時点でビビってしまった、と。

上手い人でもそうなんだ、というのがまず面白いところです。そして、その日の練習の組み立て方が、そのまま一般スノーボーダーの参考になる内容でした。

飛べる気がしない日は、優しいレーンから体を慣らす

その日、最初にやっていたのは「初級パーク・中級パークの優しめのところから調整する」ということでした。

いきなりビッグに行かない。怖いと思っている自分をそのまま連れて行かない。朝一から調子に乗らないように、と自分に言い聞かせながら、飛べるサイズから体を入れていく。

時間は10時。まだ雪が硬い。本当はあと2時間くらいカービングをしていたいけれど、今日はパークを頑張りたい日だから、という理由で優しいレーンに入っていました。

ここ、けっこう大事だと思っています。

飛びたくない日に無理やり大きいものを飛ぶと、たいてい良いことになりません。かといって、飛ばずに帰ると何も残らない。その間を取る方法が「サイズを落として入る」なんですよね。

パークにレベル別のレーンがある場所だと、これがやりやすい。初級・中級・ビッグと選べると、その日のコンディションに合わせて自分の位置を決められます。

目標は、朝いちばんに口に出してしまう

動画の中で、滑る前にこんなことを言っていました。

「逃げれないように最初に言っときます」

そして、その日の目標を宣言する。バックサイド7とフロント7を1個目・2個目で、中級レーンでフロントフリップとバックフリップのコンボ、あとは3でいつもやらないグラブ。

面白いのが、その目標を決めたのが「昨日の夜の、高いモチベーションの僕」だという言い方でした。

夜の自分はテンションが高い。だから強気の目標を立てる。そして翌朝、現地でリフトに乗った自分がそれを見て後悔する。この構図、身に覚えのある人は多いはずです。実際、動画の中でも「そんな目標立てて今すごい後悔してる」と言っていました。

「本当のギリギリより、ちょっと下」に置く

じゃあ立てた目標は無謀なのかというと、そうでもない、という話も出てきます。

「多分決めたってことはできるはず」 「目標として自分で考えたってことは、本当のギリギリよりもちょっと下げて狙ってるから」

自分で決めた目標は、無意識に「絶対に届かないもの」にはならない。頭のどこかで、できる可能性があると思っているラインを言葉にしている。だからやるしかない、と。

これ、目標設定の話としてかなり実用的だと思います。

自分が朝に言葉にできた目標は、たぶん今の自分の少し上にある。できるかどうか怪しいけれど、まったく無理ではない。そのくらいの位置に置けているから、あとはタイミングを測りながら進めればいい。

そして、口に出すと逃げられなくなる。一人で滑っていても、動画を撮っていても、誰かと一緒でも、宣言したという事実が後半の自分を押してくれます。

「死ぬかも」と思う経験が、人を強くする

ウォーミングアップを入れて4本目。ビッグを飛んだあとの感想がこれでした。

「怖かったね」 「あのサイズはなんかやっぱり、死ぬかもっていちいち思うから、練習になる」

そして、こう続きます。

「いつも同じとこだと死なないじゃん。分かっちゃうとね。死なないことしかやんなくなる」

ここ、僕はすごく刺さりました。

同じゲレンデ、同じアイテム、同じスピードで滑っていると、確実に成功する範囲が分かってきます。分かってくると、その範囲の外に出なくなる。安全なんだけど、そこから先には行かない。

「この死にかける経験がやっぱ人を強くするなって最近思います」という言葉のとおりで、上達には、自分の予測が効かない場面に身を置く時間が必要なんだと思います。

もちろん、怪我はよくない。それははっきり言っていました。ただ、その手前の「食らう」経験は必要だ、と。

「食らうことで耐えれるようになってくる」 「怪我したりする手前の痛みはやっぱ必要だなっていう」

そして、レベル別のレーンがあるパークの良さをこう表現していました。ビッグでも、中級でも、初級でも、それぞれのペースで死にかけられる。強くなりたかったら、ちゃんとしたパークで滑ったほうがいい、と。

自分の「死にかけライン」は、人によってサイズが違うだけで、どのレベルにも存在するということですね。

思ったより届かない日は、目標を組み替える

5本目に向かう場面で、こんな判断をしていました。

春は雪の状態との戦いになってくる。キッカーに届かなくなってくる前に、セブンを1回行っておこうか、と。

ところが、実際に入ってみると全然スピードが足りない。

「さっきまでちょっと加速してた感じあったのに、下りでもう全然しない」

雪が硬いことも影響していそうだ、という話も出ていました。

そこで、目標そのものを組み替えます。1個目でバックサイド7を立てられたとしても、2個目で7を打てない気がする。スピード的に、ランニングが下手だから。それなら1個目をバックサイド3にして、フロント3・バックサイド7にしようか。7と7を繋げるのは午後、繋げられそうになったら考える。

朝に立てた目標を、その日の条件で微調整していく。捨てるのではなく、順番と組み合わせを変える。

このあたりの現実的な進め方は、そのまま真似できると思います。

スタート地点で自分に腹が立つ

もうひとつ、共感しかない場面がありました。

「なんでこんなジャンプって、好きでやってるはずなんだけど、なんでやんなきゃいけないんだよみたいな気持ちになるよね、このスタートで」 「なんで俺こんなことしなきゃいけないのって、ちょっと自分に腹が立ってくる」

そして、「この怒りを力に変えて頑張ろうと思います」と言って入っていく。

好きで来ているはずなのに、いざドロップの直前になると、なんでこんなことをしているんだろうという気持ちになる。あの感覚に名前が付いた気がしました。

しかも解決策が「怒りを力に変える」なんですよね。気持ちを整えてから飛ぶんじゃなくて、湧いてきた面倒くささごと持って入っていく。

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この記事の内容は、上の動画で話したことをまとめたものです。声のトーンや実例も含めて聞きたい方はこちらから。

「5」は、自分で決めるより向こうからやってくる

この日の一番の山場は、午後に来ます。

一緒に滑っていた方が、今シーズンはあまり滑れていないという話をしていました。2月なのに5回目くらい。例年だと20日は滑っている時期だそうです。

その状態で「5をやるかどうか」を迷っている。

冷静な自分は「5回しか滑ってないんだから、やめといた方がいいよな」と言ってくる。でも、昼飯を食いながらフロントサイドスピンのイメトレをしていた。つまり、体は5をやりたがっている。

さらに、直前の3で回りすぎて「5をミスった人」みたいになっていた。ということは、もうできる状態にあるということです。

怠けたい自分を「殺す」と、向こうからやってくる

ここでの言葉が印象的でした。

「怠けたいんだけどね」 「そこで怠けたいって思い込もうとしてる自分を殺す、っていうことをしたら、やっぱり5がやってくるよね。向こうから」

やりたくない、という気持ちは本物のこともあるけれど、「やらなくていい理由を探している自分」であることも多い。回数が少ないから、疲れているから、雪が硬いから。理由はいくらでも作れます。

その「思い込もうとしている自分」のほうを止めると、技のほうから寄ってくる、と。

キッカーの声を聞く

そして、この日の当人も同じ体験をしていました。

朝に「今日は7をやる」と言って入っていたのに、実際に来たのは5だった。

「7ではなく、自然に5がやってきたって感じ」 「お前、今は5やでって、リップの抜ける手前にキッカーが言ってきたって感じ」

さらに、一緒に滑っていた方が3を打ったときも「お前もうこれ5やで」とキッカーが言ってきていた、と。

これに対して返ってきた言葉がこうでした。

「せっかくブーツの声とか板の声が聞ける状態になってるんだから、今度はキッカーの声までちゃんと聞いてあげれば」

道具の状態が分かるようになってきたら、次はアイテムの状態も読めるようになる。今日のこのキッカーが、自分に何を要求しているか。それを聞き取る段階がある、という話です。

言葉としては感覚的ですが、要は「自分の予定」ではなく「その日その場の条件」で技を決めるということだと思います。朝に決めた7に固執せず、体と雪とキッカーが揃ったタイミングで来たものをやる。

5を回すときに言われていたこと

実際に5に挑戦する直前、こんなアドバイスが出ていました。字幕から拾えた範囲でそのまま並べます。

ひとつめ。動きは見た限りできている。あとはメンタルの問題である、ということ。

「基本スノーボードってキッカーの声聞いて、しっかり逃げない。キッカーにもう立ち向かって行けば、その分力を返してくれる」

ふたつめ。伸びる動きは弱めにする。

「伸ばすともうランディング見えない。下に押してく感じがいいと思います」

みっつめ。キッカーの中でスピードを出す。

「これで大体解決します」

そして最後に、こう言い切っていました。

「5まではもうスピードと気合いでもるから、技術いらん」 「3ぐらいの気持ちでいく。もう3と変わらん」

技の番号が増えると、まったく別の技のように感じてしまいますが、ここでは「3の延長線上にある」という捉え方をしていました。直前に3で回りすぎていたなら、なおさらです。

回りきって「初めてのフロント5」でした。ただ、着地は「ランディング痛かった」とのこと。

本人の第一声は「ちょっと膝が震えて」。そして周りからは「あれはセブン目指せますね」という言葉が出ていました。回ること自体はもうできていて、着地に慣れたら立てるから、という見立てです。

一般スノーボーダーの「甘え」は、持っていていい

この日の判断を、こう表現していた場面があります。

「やっぱ一般人だから、こういう甘えはあり」 「ライダーだったらこんなこと許されませんから。もう朝1本目からセブンセブンしないと。プロなんで彼らは」 「僕は一般人なんで、ちょっと甘えていこうと思います」

雪の状態を見て目標を組み替える。届かなそうなら届く範囲の技でやる。疲れてきたら1本目から攻めるのはやめる。

プロなら許されないかもしれないけれど、一般で滑っている僕らはそれでいい。実際、この日の後半も「疲れてきて、1個目からちょっと行きたくない感じにはなってます」「届く範囲の技の中で頑張ってみようと思います」という形で進んでいました。

ちなみに、技の引き出しについても正直に話していて、「技の数がそんなないのよ、引き出しが」と言っていました。アイテムが4つ並んでいると、何をしようか迷う。そういう時にスイッチの5がパッとできれば一気に見栄えがよくなる、とも。

上手い人でも、引き出しの数には悩んでいる。そう思うと、少し気が楽になりませんか。

その後もヒール抜けのバックサイド3からフロント3を繋げたりと、その日の状態でできることを重ねていました。スイッチはあの速さになると難しい、とこぼしながら。

まとめ

  • 飛べる気がしない日は、初級・中級の優しいレーンから体を慣らして入る
  • 目標は朝いちばんに口に出す。逃げられなくなるし、自分で決めた目標は本当のギリギリより少し下に置かれている
  • 「死ぬかも」と思うサイズを飛ぶ経験が上達につながる。いつも同じ場所だと、死なないことしかやらなくなる
  • ただし怪我はよくない。その手前の「食らう」経験までが必要な範囲
  • スピードが足りない日は目標を捨てず、順番と組み合わせを組み替える
  • ドロップ直前に「なんでこんなことを」と腹が立つのは普通のこと。その怒りごと持って入る
  • やらない理由を探している自分を止めると、技のほうから寄ってくる
  • 板やブーツの状態が分かるようになったら、次はキッカーが今日の自分に何を要求しているかを読む
  • 5を回すときは、伸びる動きを弱めて下に押す。キッカーの中でスピードを出す。気持ちは3のまま
  • 一般で滑っている僕らは、雪や体調に合わせて甘えていい。届く範囲の中でその日のベストを出せば十分

自分の場合はどうなのか

ここまで書いてきたことは、あくまで一般的な話です。

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